【開高健を訪ねて】坂本忠雄「開高健の魅力」講演

開高健を訪ねて 坂本忠雄氏 講演

2009年10月31日、記念館を楽しんだあと、茅ヶ崎市立図書館で行われた坂本忠雄氏による講演に行きました。

記念館の様子はこちらから。

坂本忠雄氏講演「開高健の魅力」

坂本忠雄氏略歴

1935年山口県生まれ。慶応義塾大学文学部卒。59年新潮社入社、文芸誌「新潮」の編集長を81年から14年間務める。川端康成、小林秀雄、大岡昇平、安岡章太郎、開高健他、多数の作家を担当した。現代第一線の文学者・研究者をゲストに、昭和を彩った作家たちを縦横に論じた「文学の器」(扶桑社)がこの8月刊行された。現在NPO法人開高健記念会会長。(「耳の物語」で "カツアゲの坂本" として登場。)

またまた一緒に行った友人(最近になって開高健を読みあさっている、27歳の女性、巨乳)からのレポートが届きましたのでどうぞ。


文字・活字文化の日記念講演

「開高健の魅力」

魅力その1 文学


開高健は多様な作品をのこした作家である。

小説は「パニック」 「日本三文オペラ」
「青い日曜日」 「耳の物語」 「輝ける闇」 「夏の闇」 「ロマネコンティ一九三五年」 「珠玉」など。
これらの作品は饒舌でリズミカルであり、なお活字が立っている。腐らない、独自の文章である。
一行をほりこんで書いている。精神が開かれている。
これは一種自在な能力だ。

ノンフィクションは「ずばり東京」 「オーパ!」シリーズ、「サントリー洋酒天国」など。

とにかく多様、これが若者を捉えて放さないのである。

魅力その2 人となり

開高健は独特の人なつこさがあり、嫌いな人間とは付き合わなかった。
感情の起伏が激しく、大阪弁で大声で喋るが神経は細かかった。
「あわれな開高」「よれよれの開高や・・・」と電話口で開口一番おっしゃっていたが、鋭敏で哀しみが沸々とあるような人だった。
時には銀座で安岡章太郎と大声でシャンソンを歌うなどしてハメを外すが(これをパリでもやった!)、一度部屋へ籠るとそれきり出てこない。出てこないと思ったら急に外へ飛びだし戻ってこない。百面相のような人だった。

魅力その3 行動の軌跡 < 飲む >< 食べる >< 交わる >< 生死>

< 飲む >
開高健はお酒が大好きで、吉行淳之介との共著「美酒について」
でも様々な蘊蓄を語り合った。
原稿を書く時には決まってウォッカをストレートで飲む。
これは『書く』ということに対する羞恥心を持っていたからではないか・・・食道ガンはこの飲み方を繰り返したことによる火傷が原因ではないかと思っている。
文学論を語りながら、つまみも出さずにウォッカを飲まされることが常だったので、帰りにラーメンをすすることも度々だった。
編集長になった時には、銀座のフランス料理店で持参したロマネコンティをふるまってお祝いをしてくれた。
夏の暑い日に日本橋のおでん屋で日本酒を飲んだりもしたがこれが最後の酒の付き合いとなった。

< 食べる >
食通だとか美食家は嫌ったが、食べることは「生きる」や「飢える」にもつながるとし、食べることを喜んでいた。

< 交わる >
についてはいろいろきわどい話も聞きましたが、ここでは割愛させてもらいます。とのことでした。

< 生死 >
35歳でベトナムを取材したことが原体験となり、人生体験の分け目になっている。
それまでの開高はヘラヘラベラベラとしていたが、それを境に成熟した人間へと変った。
その後傾倒した釣りも生死と関わっている。
釣り作品の「フィッシュオン」の釣りの描写は、ヘミングウェイの「老人と海」のそれにも匹敵すると思う。
釣った魚は生き物に対する優しさからリリースしていた。
井伏鱒二は開高の釣りの師匠だが、彼も躁鬱だった。

魅力その4 物に対する執着

川端康成は変った人で、骨董品を色んな所から集めていて、原稿を取りに行くと国宝がぶら下がっていることもあった。
小林秀雄も骨董が好きで、白磁の徳利や杯を使っていた。
戦後の作家にはなかなかこういう人はいないが、開高健は日常品を集める癖があった。
「生物としての静物」 にも描かれているが、ライター、ダンヒルのパイプ、モンブランの万年筆、旧約聖書、百人一首、言海など。
玩物喪志とは「ちんけなものを持ち歩いて心を失うな」ということだが、「文学者は確実に横にある物が大切だ、不安な心が安らぐ」と言っていた。

感想
生前の開高さんと深く親交のあった坂本氏の当時の思い出話を聞けて、様子がありありと眼に浮かぶようでした。
私ももう少し早く生まれていて、開高さんと出会う奇跡的なチャンスがあったら(ないか・・・)どんな話をして下さっただろう・・・なあんて妄想したり。
またこういう講演があればぜひ行きたいです。

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このサイトについて

開高健(かいこうたけし)
1930年12月30日〜1989年12月9日
ベトナム、アラスカ、モンゴル・・・
世界を股にかけた行動する作家、開高健のあれやこれやを紹介するサイトです。
リンクはどこでもご自由に。

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