アクアマリン、ガーネット、ムーン・ストン──三つの宝石に托して語られる、澄明無比の三つの物語に、作家の生涯が刻印された!
「掌のなかの海」
青い海の色をしたアクアマリン
床にオガ屑を撒いた酒場で出会ったのは、海で行方不明になったらしい息子を探し続ける医者だった。
「玩物喪志」
赤い血の色をしたガーネット
渋谷の中華料理屋の主人が貸してくれた宝石は、スランプだった「私」に赤い色にまつわる記憶を呼び覚ます。
「一滴の光」
乳白色の月の色ムーン・ストーン
その石を手に入れたときから、心に生まれた白い核。若き女性編集者と情事を重ねながら、その核心を追い求める「私」。
亡くなる二ヶ月前に書き上げた、開高健最後の一冊。
珠玉(文春文庫)
シンプソンのローストビーフも食べたはずなのに肉も皿も思い出すことができず、こんなフィッシュンチップスの一包みが生きのこって、いつまでも忘れられない。
闇というもののない大都市の夜の光が石を海にした。
掌の中に海があらわれた。
はるかな高空から地球を見おろすようであった。
掌の中の海は微風のたびに煌めいたり、非情な純潔さで輝いた。
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