「純潔無比の倨傲な大岩壁をしぼって液化したかのようである」新潟・銀山平の水を「飲む」。
二〇〇人の部隊のうち十七人しか生き残らなかったヴェトナム戦争の最前線を回想し「弔む」。
老釣師から鮎釣りの秘技を「伝授される」―。
動詞系をタイトルに、あらゆる事象を多元的な視点で捉え、滾々と湧き溢れる言葉で表現していく。
行動する作家が遺した珠玉のエッセイ集。
光文社文庫、開高健エッセイ選集第一弾。
「飲む」「驚く」「聞く」「狂う」「書く」・・・。
以前の文庫版は角川文庫から三冊にわけて売られていました。
それをひとつにまとめてあるので、文庫本とは思えないほどのボリュームです。
白いページ 開高健エッセイ選集(光文社文庫)
酒を飲んでいるとたいてい昔のことを思いだす。
昔のことを思いださずに酒を飲むというようなことはあり得ないね。
ということはダ、なつかしいか、にがいか、それは人によるとして、つまり弔辞を読んでいるということなんだよ。
みんな酒を飲むときはそれと知らずに弔辞を読んでいるのだよ。
作家にとって文体を変えるということはシャツを変えるようなことではなく、むしろ、皮膚を変える、といいたくなるような苦業である。
酒だろうと、香水だろうと、ハタまた文学であろうと、お粗末品すべてにつきまとうイヤらしさをよくよくおぼえておくのが上物を味得するもっともたしかな、狂いのない方法である。
日頃どれだけお粗末品をたしなんでいるかによってどれだけ上物の全域と真髄が察知できるかがキマる。
第二弾として「眼ある花々 / 開口一番」、第三弾として「ああ。二十五年」が発売になりました。
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