開高さんは、1989年(昭和64年・平成元年)の12月9日、午前11時57分、食道腫瘍に肺炎を併発、済生会中央病院で逝去、享年58歳でした。
病室で元気で楽しかった先生も11月20日過ぎから、体調が芳しくなくなり、読書もされなくなっていました。確か11月24日の午前11時頃に「メモとペンはあるか」とおっしゃって、私の手帳とペンを取って何か書かれたのです。これが開高先生の最後の文字になったのですが、中華料理の料理名だったのです。しかし、いつもの角張った文字が消えて、ゆがんで弱々しい文字に変っていました。わたしがこれを食べたいのですかと聞いたら、「やっちゃん、君が食べろ」と言われました。この日を境に病状は悪化し、12月9日永眠されました。
「もったいない恩人」岩切靖治(読売広告社)「一言半句の戦場」より
